Time to sands… |
君が好きだ。 それ以外に言いようが無いと、今更ながら悟る。 それ以外のどんな言葉をも、君への気持ちを言い表せない。 綺麗だ、とか素敵だ、とか。 褒め称える言葉はいくらでも思いつくけれど、そんな言葉では俺の気持ちを伝えることはできない。 伝えたいことは、ただただシンプルなことなのだから。 それなのに――今日も君はここには居ないね。 「功……最近、何かあったのか?」 「どうして?」 「いや、なんとなく……な。なにもなけりゃいいんだ。悪いな」 ああ、そうなんだ。 自分は彼のことが好きなのだ。 そんな単純なことに気が付いたのはつい最近のことだ。 炎のように燃える心は無い。 焼け付くように身を焦がす気持ちも無い。 ただ……締め付けられるような、甘やかな感情があるだけだ。 彼に会いたいと、強く願うだけの俺。 自嘲気味に吊り上げた唇の端を、ため息とともに引き戻す。 俺の心の柔らかい所をじわり、じわりと侵食していく君の微笑。 あまくて、切ない。 「……すまん、俺ちょっと出かけてくる!」 「え……?あ、おい!功!」 「悪い!この次必ず埋め合わせするから……!」 なぜ、俺の足はもっと速く地を蹴れない? なぜ、俺の声はもっと遠くへ届かない? なぜ、俺の背中には羽根がないんだ……! そこにいけば、彼が居ると言う保障は無い。 そこにいって、彼に思いを伝えられる確証は無い。 そこにいけても、彼を抱きしめられる自信は無い。 けれど…… 俺の足は確実にあの場所へと向かっていて。 俺の瞳は彼だけを捉えていて。 俺の脳裏には彼の姿が焼きついていて。 どうしようもないほど、彼のことが忘れられない。 いま、君はどこに居る? 何を思って、何を見て、何を言葉にしている? 何を感じて、何を抱いて、どうしているんだ? ――。 俺は今から君を探しにいく。 |