かぐや姫

PRINCE KAGUYA

昔々、ある所に家光と奈々という夫婦がおったそうな。
家光は「俺は泥の男だから油田を掘りに行く」とか何とか奈々に話しては、フラリと山へ出かけていきました。
「というわけで、オレは出かけるからツナには『オレは星になった』とでも言っておいてくれ!」
「はーい、アナタ」
ツナ:えっ!かーさんそれでいいの?!(ガーン)
:そんなの今に始まったことじゃないだろ。
二人には綱吉という息子がおりましたが、ある日フラリと家に帰ってきた家光は
「竹薮で見つけたぞ!」
と身の丈9cm程の、輝くばかりに美しい少年を抱えて帰ってきました。
「まあ、可愛らしい。ねえアナタうちで育てましょう!」
「よし。ツナ、お前は今日からお兄ちゃんだぞ!」
「それでいいのー?!」
その少年はと名付けられ、綱吉と共にすくすくと成長していきました。
:つーか、少年って時点でおかしくね?
が沢田家に引き取られて数ヵ月後、すくすくと成長したはこの国一番の美少年に成長していました。
うわさを聞きつけた若い公達も若くない公達も、その噂の姿を一目見ようと、沢田家の周りにはストーカー達が毎日押し寄せるようになっています。
「はぁ……うぜぇ」
は眉間にしわを寄せると、いかにもかったるそうに縁側に寝そべっていました。
これでは満足にトレーニングすら出来ません。
段々と、はイライラし始めました。
「おう、。誰か気に入ったヤツいないのか?」
「オレは男だっつーの」
「そんな些細なこと」
「些細じゃねぇよ!」
毎日のようにこんな会話が続いています。
さて、痺れを切らしたのはなにもだけではありません。
外でたむろする暇人……もとい、公達たちも、未だに顔を見せないに我慢の限界を迎えておりました。
大方の公達は諦めて岐路に着きましたが、彼らの中でもっとも剛毅な5人は
「もういっそ、プロポーズしちまえば良くね?」
という、冷めるどころかむしろ見事な猪突猛進加熱っぷりで相談を始めました。
「と、言うわけでその猪突猛進剛毅なアホどもから文が届いてるぞ」
「アホ扱いかよ」
家光はそれはもう楽しそうに5人の文を持って帰ってきました。
「公達さんからお手紙着いた〜さんたら読まずに捨てた〜♪」
見事に鼻歌を歌いながらはその文を破り捨ててしまいました。
「まあ、破ったところで既に見合いの話はつけてきたからな。人生潤いが必要だぞ?」
そう言って笑う家光の後頭部をしこたま殴りつけた後、仕方なくはお見合いをすることとなってしまいました。
「だ、大丈夫だよ。気に入らなければその場で断ればいいよ」
綱吉はそういってを慰めますが、はうんざりした様に不貞腐れています。
「そんなんで諦めるようなやつらが3ヶ月もうちに通うか?つーか、オレは嫁にもらうならイーピンって決めてるんだ」
「えっ!そ、そうだったの?」
「安心しろ、京子には手を出さないから」
「そういう事じゃなくて……!」
「こうなれば頭脳戦だな……」
はそう言って不敵な笑いをその相貌に浮かべると、胡坐を掻いて思案し始めました。

翌日。
現れた5人の公達の前で、はニコニコと微笑んでいました。
「極限燃えるな!」
「てめぇらにはゆずらねぇ!邪魔するヤツはぶっ殺す!」
「ふぅん……噂以上だね。ますます噛み殺したくなってきた」
「うーん。是非我がファミリーに迎え入れたいね」
上から笹川了平、獄寺隼人、雲雀恭弥、ディーノの順に自己アピールをしていきます。
「ん?お前は何も言わなくていいのか?」
が最後の公達にそう言うとその公達は困ったように頭を掻きました。
「んー。まあ、何言っても最終的に決めるのはお前だし、オレが選ばれても選ばれなくても文句はいわねーよ」
「お前、山本武だっけ」
そう言うと、は少し考えるように腕を組みました。
「よし、じゃあお前たちに簡単なテストをしてやるよ。それで、それに答えられたヤツと仲良くしてやる事にする」
そう言うと、は一人一人に問題を書いた文を手渡しました。
「各自、そこに書かれたものを明日の夜明けまでに持って来てくれ」
書かれていたのは……

了平:イーピンがオレ宛に書いたラブレター
隼人:イーピンがオレのために編んだマフラー
雲雀:イーピン直筆一日デート券
ディーノ:イーピンがオレに甘えてくれる券
武:イーピンがオレのために作った手料理

「ラブレターとは……恋文の事だな!人の恋文を届けるなど……!」
「マフラー……朝までに編めるかよ!」
「ふざけてるの?こんなの渡したら僕との時間が無くなるじゃないか……」
「あ、甘えてくれるって……」
公達は口々に文句を言います。
「嫌ならいいんだぜ?リタイヤってことで早々に出てってくれよ」
は反応を見越したようにニヤリと笑います。
「じゃ、いってくるぜ」
その中で唯一人、山本だけは意気揚々と出かけていきました。
「てめ、抜け駆けかよ!」
後を追うように他の公達も出かけていきます。
「……あいつ、へこたれるって事ないのか?」
は山本の背中を見送りながら思わず感嘆の声を上げました。
「山本だからね……」


そして夜明け前。
「よっしゃ!一番乗りだぜ!!」
と、まるで御簾を跳ね上げるようにして獄寺が帰還しました。
「ん、じゃあブツを見せろよ」
獄寺は得意げにマフラーを差し出します。
「ほら、さんっ!手編みっすよ!!」
「ほう、そうだな」
「でしょっ!ってことでオレが勝者……」
「だが隼人、このマフラーにはハルの字で『ツナさんへv』と書いてあるが……?」
「……ゲッ!あのアホ女!!いや、ちが、さんコレには深いわけが……!!」
「アホはお前だっ!死んで詫びろっ!!!」
そう言うとは持っていた鉄扇で容赦なく隼人を殴り飛ばしました。
「うがっ!!」
派手な音を立ててあえなく獄寺ダウン。
「はい、お疲れ様〜♪」
大の字に倒れた隼人は家光の手によって屋敷の外へ強制送還されました。
「よし、次!」
「極限努力したぜ!」
そう言うと、御簾を引きちぎる勢いで了平が飛び込んできました。
「よし、見せろ……っておい、了平……コレはてめぇの字だろうが!!!」
「うむ。やはりオレは人に恋文など書かせられん。従って……極限にオレの気持ちを綴ってみたぞ!!!」
「極限にいらねぇ!!失格!腹切って詫びろ!」
の鉄扇が容赦なく了平を襲い、了平もその意識を極限に手放しました。
「人生に悔いなしっ!!」
「はい、お疲れ様〜♪」
後頭部をしこたま打ちつけ倒れた了平は、これまた家光の手によって屋敷の外へ強制送還されました。
「次だっ!」
「まったく……こんな事のために走らされるなんて心外だね」
「雲雀か。で、デート券は持ってきたか?」
「面倒だけど持ってきたよ……」
そういうと、面倒そうに雲雀は封筒をに手渡します。
「む……これは……本物のイーピンの字だ」
封筒には丁寧に書かれたイーピンの中国語が踊っています。
「あたり前だよ」
はイーピンとデートできる嬉しさと、計画が狂ってしまいそうな焦りを同時に感じながら、封筒を開きました。
「雲雀……」
「なに」
不意に、の瞳にそれはもう物凄い怒りの炎が灯りました。
「だ・れ・が、お前とイーピンのデート券をもらって来いと言った……!!」
「……ワオ、その殺気良いね。噛み殺したくなる」
「望みどおり地獄へ送ってやる……!」
嫉妬に駆られたの鉄扇(威力5倍)が雲雀のトンファーを打ち砕き、雲雀の鳩尾に激しくヒットしたとたん、雲雀はスローモーションの様にどう、と倒れこみました。
「はい、お疲れ様〜♪」
これまた家光の手によって雲雀も屋敷の外へ強制送還されました。
「後はディーノと山本か」
ニコニコしながらそう言う家光を睨み付けると、は嫌そうに胡坐をかきます。
「アンタ、明らかに暇つぶししてんだろ」
「あっ、バレたー?」
そういうと、まったく悪気がなさそうに家光は大笑いをしました。
「最初から解ってるに決まってるだろ!」
「まあまあ。ほれ、その最後のディーノと山本が戻ってきたぞ」
そちらの方向に目をやると、ディーノと一歩遅れるようにして山本が帰還しました。
「で、まずディーノ。どうだった?」
「それが……」
そう言いながらディーノは困ったように頭をかいた。
に甘えるなんて恐れ多いって断られちゃってね」
ディーノの言葉にはがっくりと肩を落とす。
「あっ!だから代わりと言っちゃ何だけど、コレを……」
「ん?何だ?」
「はい『ディーノに甘えられる券』!」
「そんなもんいるかっ!!」
爽やかな笑顔が妙に癪に障ったは問答無用でディーノに鉄扇をぶちかましました。
「ぐふっ!」
「はい、お疲れ様〜♪」
これまた家光の手によってディーノも容赦なく屋敷の外へ強制送還されました。
「ったく、ロクなものもってこねぇな」
いい加減はイライラし始めました。
「まあまあ、怒るなって」
を宥めるように、今まで沈黙していた山本が声をかけます。
「最後は武か」
「遅くなっちまったけど、コレでも食って落ち着けよ」
そう言って山本は後ろを振り返り、手招きしました。
「○×△※◎!」
そこからヒョコヒョコと現れたのは風呂敷を持ったイーピンです。
「なっ!」
の目が零れ落ちそうなほど見開かれ、猛然と輝き始めました。
「△※○☆×!」
「……え?オレに?」
イーピンは風呂敷をに差し出しながら頷きます。
「新作の肉まん、お前に味見して欲しいんだとよ」
「……でかした武!!!」
「喜んで貰えたならよかったぜ」
「じゃあ早速……」
満面の笑みで、は肉まんをほお張ります。
「……ぐはっ!」
次の瞬間、大量の泡を吹き出しながらは白目をむいてバタリと倒れてしまいました。
「……おい、?!」
「○×△※◎!!」
「……こりゃ、ポイズンクッキングだな……」
「お、チビ!」
山本が振り返ると、そこにはを覗き込んでいるリボーンの姿がありました。
「△※○☆×!」
「……ビアンキに料理をならったらしーな」
「ビアンキ姉さんにか……」
「ち、オレは本国からこいつの帰還を任されてきたんだが、これじゃしょーがねーな」
そういうと、リボーンは腕を組みます。
「帰還?」
「ああ、こいつはしばらくの間月からの指令で下に降りてきてたんだぞ」
「帰っちまうのか……」
山本は少し寂しそうに独りごちました。
「いや、指令をもう少し長くする様交渉してきてやる」
「お、そうこなくっちゃ!」
「ま……て……オレを……月へ……」
「まーまー。もう少しここで仲良くしようぜ」
息も絶え絶えながらリボーンに訴えるを宥めるかのように山本が追い討ちをかけました。
「山本の言うとおりだぞ。約束は守れよ」
「ぐっ……」
そうして、はそのまま地球に残る事となり、約束どおり山本とは仲良く暮らしましたとさ。



「か、帰してくれーーーー!!」
「うるせーぞ」

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