火曜サスペンス 〜旅情湯煙殺人事件〜

「シャ、シャマル!!山本!!ディーノさん、雲雀さんまで……!!」
血まみれで浴場に横たわる4人。
「ど、どうしよう!このままじゃ4人が……!」
青ざめるツナだったが、これはまだ、これから始まる大惨事の序章に過ぎなかった……。


ことの起こりは1週間ほど前。
時は世間で言うGWという、長期休暇に突入している頃……学生の彼らもまた、休暇を満喫していた。
学生の夏休みやら冬休みに比べれば長いとはいえない休みだが、なんとなく「連休」という響きには浮かれるものがある。
それは並中の彼らたちも例外ではなく、
「連休だし、2泊3日くらいで温泉行こうぜ!あ、このリストのヤツは全員参加な。来なかったら新月の日にオレが撲殺しに行くから♪」
というとんでもない一言によって2泊3日の温泉旅行が決行される事になっていた。
リストメンバーは主に守護者、ディーノ、イーピン、ハル、京子、ビアンキ。
雲雀は「群れるのは嫌いだよ……」ということで欠席……などを許すわけも無く、は「じゃ、お前は現地集合な!」とそれはもう見事に強引に場所の書いてある地図を無理やり手に捻じ込……否、手渡した。
物語はそんな彼らがのんびり<効能:肩こり、リウマチ、皮膚炎、関節炎>のかけ流し露天風呂に入っているところから始まる……。


「おぉ〜絶景だなぁ。やっぱ日本の温泉はいいねぇ」
は海パン一丁の姿で尊大に腕をくんで露天風呂の眺めると、歓喜の声を上げた。
「確かにいいね!オレも日本の温泉は初めてだよ」
その隣には若干顔を紅潮させたディーノが笑顔で立っている。
「ちょ、ちょっとー!何二人ともパンツ1丁で仁王立ちしてんの―――?!」
浮かれながら浴場に入っていった二人を追うように、ツナがあわてて腰にタオルを巻きながら浴場に入って早々にツッコミが炸裂する。
「ん?おお、ツナ!」
「ん、ツナか。しかし……こっちも絶景と言うか何と言うか……」
「ディ、ディーノさん鼻血―――?!」
「だっ大丈夫だ……ぶふ!!」
「あー……ツナ、お前こそそんなあられもない格好でディーノに近寄んな。ディーノ死ぬぞ?」
「違うよ!明らかにコレの元凶はオレじゃなくてはだよっ!」
どごぉ!!!
「10代目!!なんてあられもない格好でこんなハイエナの前に!いけません、さあこのタオルで全身を隠してください!!」
にノックアウトされながらも辛うじて意識を保っていたディーノの後頭部に、分厚いバスタオルを持った獄寺の手刀が炸裂した。
瓦30枚ほど割れそうな勢いのそれは、哀れなディーノに止めを刺すのに十分だった。
「む、無念……」
「ディ、ディーノさん!」
「さあさあ10代目!早くこれをお召しになってください!」
ずずい、と獄寺がバスタオルをもってツナににじり寄る。
「え、ええええ?!つーか、だから元凶はオレじゃなくてだっての……!」
「あーダメだ獄寺。公衆の風呂にバスタオルを持って入るのはご法度なんだぜ?」
「や、山本――!」
温泉初心者達を苦笑いで眺めながら山本が浴場に足を踏み入れた。
「あんだと?文句あんのか?!」
「文句っつーか、それが礼儀だからな。ああ、それから海パンもダメだぜ、
「ええーマジか?!山本!」
「ああ。オレんとこオヤジが割と風呂好きでな、よく連れて行かれたんだが、そこでマナーを叩き込まれたんだよ」
「へえ、イタリアのスパだと水着着用だからなぁ。違うもんだな。じゃあどうやっては入るんだ?手ぬぐい?」
「何を言っている!男の風呂は極限まで素肌になって入るに決まっているだろう!!!」
「お、お兄さんそれも違う!!」
「違わないぞ!手ぬぐいを巻くなど、面倒だ!これでどうだーーー!」
「ソコまで極限かよ!!」
「10代目の前で前くらい隠せこの芝生頭!!」


そんなこんなで漸く湯船につかる事の出来た面々。
「ディーノさん大丈夫……?」
「いけません、10代目。こいつに近づいては」
「オレよりを離した方がいいよ……」
「猛犬扱いかよ。つーかディーノ、あんまり長湯すると危ないから気をつけろよ」
「くっ……仕方ないな、、オレは暫く外にいることにするよ」
不承不承といった調子でディーノが露天風呂に備えられた休憩スペースに行こうとすると、突如として聞きなれた、しかし聞きたくない嫌な声がたちの耳に飛び込んできた。
「おおっ!この穴……女湯のぞけるんじゃねぇか?!」
「なに?!……っつーか、シャマル!?」
「おお!声が聞こえるぞ……これは京子ちゃんに、ハルちゃんに、ビアンキ、それにイーピ……うご!!」
台詞を言い終わらないうちに、シャマルの後頭部に風呂桶が炸裂する。
更に哀れなディーノの後頭部に、流れ弾……ならぬ流れ桶が炸裂した。
「死に晒せ!!!!イーピンの風呂を覗こうとするなんて万死に値する!!」
ゆらり、とが岩風呂から立ち上がる。
勿論山本の命により全員海パンは着用していない。
「うわ、オレちょっとやべーかも」
「ちょっと山本――!?なにナチュラルに笑顔で鼻血出してるの――?!」
「10代目、近づいちゃいけません!!」
既にこの時点で重症3名。
風呂場はちょっとした戦場になった。
「だ、誰か助けて――!」
ガラリ
ツナの声に駆けつけたのは雲雀。
「君たち……風呂で暴れてると全員噛み殺すよ?」
「雲雀さんこそ鼻血たらしながら何してるんですか――?!」
「10代目お召し物を!!」
「噛み殺す……」
ぱたり
「この人鼻血出しながら倒れたよ――!」
「なんだ?雲雀何見てそんな興奮したんだ?!」
キョトンとする
「この人自覚ナシだよ――?!」
血まみれで浴場に横たわる4人。
「ど、どうしよう、獄寺君!このままじゃ四人が……!」
「ほっておきましょう10代目」
「ほっとけ!オレはシャマルを山に捨てに行く」

青ざめるツナだったが、これはまだ、これから始まる大惨事の序章に過ぎなかった……。
まだまだGWは始まったばかり……。
「オレ、やっぱり休めそうにないんだな……」
と、ツナが肩を落としたのは言うまでもない。


* * * * *
最近あまりに更新が少ないのでSSをUP。(-_-;)
短い上にギャグですが、おやつ程度に楽しんでくださいませ。
主人公は山本編の君です。
本編の小休止編♪
時間が出来たら続きがUPするかも(*´Д`)

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