Thank you……                                   山本祭 第3弾 

「なあ、武。お前明日誕生日だっただろ?プレゼント、何が欲しい?」
「んー……じゃさ、明日オレとデートしてくれよ」
「なんだ、そんなもんでいいのか?」
「勿論」
「わかった。じゃあ明日、お前の部活が済むの待ってるよ」



「わりー、遅くなったな」
そう言いながら、山本武は至極嬉しそうに校門に寄りかかっていたに駆け寄った。
「いや、平気」
気にした様子も無くはそういうと、持っていた超薄型のノートPCを鞄に仕舞いこむ。
武には詳しい事は判別がつかないが、最新式のものであろうことは想像がつく。
「いいな、それ。でも雲雀に見つかったら没収されるんじゃないか?」
「そこは大丈夫。ちゃんと交換条件をつけてあるから」
何気なくそういうと、はにこりと笑う。
武はそんなの表情に僅かに見とれると、それとは別の胸に渦巻く感情に気づく。
交換条件……その内容が気になる。
だが、おいそれと他人の約束事に首を突っ込むのは感心しない。
そう思っているからあえて聞く事はしないが、それでもほんの少し心に生まれる嫉妬。
その感情を武はもてあましていた。
「そっか!じゃあ帰るか」
思いを断ち切るように明るい声をあげる。
時計の針は午後七時を回ろうとする頃だが、まだ空は薄明るい。
オレンジ色の光が、二人の影を伸ばす。
「なぁ……本当にこんな事でいいのか?」
不意に、はそう呟く。
「いーんだって」
武の返答に、それでもはでも、と漏らす。
「これじゃ、いつもと変わらないぞ」
誕生日らしい事、なにもしてないとぼやくの柔らかな髪を武はそっと撫でた。
「いーんだ。オレにとって一番大切なのは、いつもと変わらない、との時間」
その気持ちに偽りは無かった。
この世で一番大切なのは、
照れた様子も無くそう言い放つ武に、は参ったというように破顔した。
「やっぱ、お前には勝てないな」
「んー、それはオレもなのな」
瞬き三度くらいの間。
同時に二人は噴出す。
「相子だな」
「そーだな、相子だ」
ゆっくりと赤い光が影を伸ばし、夕闇を誘いながら暮れてゆく。
「なあ、雲雀との取引、気になるか?」
不意に舞い落ちるの言葉。
武は思わず返答に窮した。
「まぁ……気にならないって言ったら、嘘になるな」
僅かな逡巡の後、武は素直にそう答える。
「たいした事じゃないさ。情報の提供。面白い話を手に入れた時に、それをあいつに伝える。そのためにはこいつが必要ってわけでな。見逃してもらってる」
そういうと、は艶やかな笑顔を浮かべる。
「そっか」
「そうだ、それだけだ」
二人、笑いあう。
本当は、もうどうでも良かった。
彼がどこで何をしていようと、彼を好きなのは自分なのだ。
それさえ揺ぎ無ければ、他は大したことでは無い。
の笑顔を見て、武は強くそう思った。
「なあ、武」
「ん?」
自分を見つめる瞳に、武は思わず笑みを零す。
が自分を見ている、ただそれだけで胸に暖かい熱がこもる。
「なあ、……生まれてきてくれて、ありがとな」
不意に口をついた武の言葉に、は一瞬惚けたように武の瞳を見つめる。
「オレと出会ってくれて、ありがとう」
武の言葉に、は思わず嘆息する。
「……それ、オレの台詞だろ」
「ん?……ははっ!まあ、いーじゃねーか」
どちらとも無く、手を繋ぐ。
お互いがいる事が、最高の幸せ。
何気ない日常が宝物に感じる。

THANK YOU
お互いの存在に、ただ二人は感謝した。


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山本武誕生日夢です!
もう、彼への愛おしさが爆発しすぎてただのラブレターになってますが、少しでも皆様に楽しんでいただけたら幸いです♪

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