TWINS ! Ver.Y.W |
「……っ痛!……結人ー!結ちゃんー!ゆうとーー!助けて〜〜〜!!」 台所で麦茶のペットボトルに口をつけたとたん、結人の耳に弟の叫び声が聞こえてくる。 「んあ?」 結人はとりあえず口に含んでしまった麦茶を飲み下すと、ペットボトルを持ったままリビングへと踵を返す。 「ゆうと〜くるしいよ〜はやく〜〜」 弟の声がまだ切羽詰ってはいないので、結人は少し安心しながらもカウンターからリビングを覗いた。 ……と、そこで目に入ったのは、テレビに押しつぶされている弟の姿。 「……、なにやってんの?」 結人は思わずペットボトルを置くのも忘れて、そんな間抜けな質問をする。 「見てわかるだろ〜下敷きになってるんだよ〜」 確かに、そこには25インチ大のテレビを持った姿のまま座り込んでいる弟の姿がある。 大方、テレビを持ち上げたのはいいが、持っている途中で重さに耐え切れず尻餅をついて、立てなくなったというところだろう。 もっとも……いったいなぜがそんなことをしたのか?ということについては見当もつかなかったが。 「……お〜い〜!見てないで早く助けてってば〜!」 「はいはい……」 結人は苦笑すると、持っていたペットボトルをテーブルに置き、ひょいと弟を押しつぶしているテレビを持ち上げる。 「助かった〜結人ありがとう〜」 すかさず這い出してくる。 「よっ……と」 「あ、結人まだ置いちゃ駄目!」 結人がそのまま元の位置に戻そうと、ラックの上にテレビを置こうとした瞬間が再び声を上げる。 「……どうして?」 「まだ拾ってない!」 結人は「何を?」と聞こうとしたが、さすがに手が痺れてきた。 大の大人でも相当に重いと感じるはずのテレビを一人で持っているのだから当然だ。 結人はとりあえず床にテレビを下ろす。 「……なにを?っていうか、どうしてテレビなんか動かそうとしたんだよ?」 「う……わ、笑うなよー?花瓶の水を替えようとして、テレビの後ろに落し物しちゃったんだよ……」 そう言いながら、はテレビの上が定位置である花瓶をみる。 「で、それを取ろうとしたの?一人で?」 結人は苦笑した。 「だ、だって……」 がほんの少し紅くした頬を隠すように目を伏せる。 「……だから」 「え?」 「ピアス!結人が誕生日にくれたやつ!憶えてるだろー?」 「……へ?」 そういえば、あげたな……と結人は頭を掻いた。 照れくさいような、恥ずかしいような感覚。 「……だから……無くしたくなかったし……」 ちょっとふて腐れたように唇を尖らせて横を向く。 「……それとこれは別じゃないか。何で最初から俺を呼ばないんだよ」 照れ隠しにちょっとお兄ちゃんぶってみる。 「今回は大したこと無くてよかったけどさ、打ち所が悪かったら……とかあるだろ?」 「だって……今だって、お前は一人でテレビ持ち上げられて……ボクだってさ、テレビくらい持てると思ったんだよ。」 「………」 「あーあ、ずるいよ結人は。双子のくせに一人でどんどん男らしくなっちゃってさ……」 ぷう、と頬を膨らませたままはピアスの捜索を再開する。 結人は『仕方ないな』と苦笑をしながら、ピアスの捜索に参加した。 * * * * * 「……ある?」 「……駄目」 はぁ、とが溜息をつく。 「……ごめんな、結人」 少し目を伏せたを見て、結人は一瞬高鳴った心音を感じて苦笑する。 ――あーあ……いい加減、俺のブラコン重症かも。 「……そんなに落ち込むなよ。また今度買ってあげるからさ」 「でもさ……」 「あーもう、謝らなくていいからそんなに落ち込まないっ!」 結人は勢いよくの頭クシャクシャとを撫でる。 瞬間、結人の視界に何か光るものが入った。 「……あれ?」 「え?なに?」 「ちょっと動くなよ?」 そう言って結人はの着ているパーカーのフードの中を覗き込む。 「……あ!」 「え?」 「……発見」 そう言って結人はに光るものを差し出す。 それは紛れも無く結人がにプレゼントしたピアス。 「……ったく、おっちょこちょいだよなぁ、は」 結人はからかうように笑う。 「そ、そんなこと言うなよぉ……そりゃ感謝してるけどさ」 「ま、可愛い弟のためだからね。これくらいはしてやるよ」 そう言って結人は快心の笑顔で微笑む。 「うん、ありがとう結人。……やっぱさ、頼りになるよな!」 はそう言って快心の笑みを見せる。 「……!」 その時の結人の顔は、彼の大嫌いなトマトのように赤い顔をしていたとか。 そんな彼が更にブラコンに磨きがかかったのは言うまでも無い……とのこと。 * * * * * 涼:中学生の男の子のピアス……(汗)。涼澤的にはあまり好きじゃないのですが……指輪だと「結人!あんた何が目的なの!?」的なことになってしまうと思ったので(笑)。深い突っ込みはしないでいただけると嬉しいです……(死)。 |
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