友情戦線異常なし!

「……騙された」
そう言って、俺の隣でが唇を尖らせる。
その姿があまりにも可愛いので、俺は口の端が無意識に上がりかけるのを懸命にこらえて無表情を作りながら答える。
「……俺は別に騙したつもりは無いけど?」
揺れる電車の中、クーラーの風での髪が揺れる。
さらさら、という音が聞こえてきそうなほど涼しげに揺れる髪。
俺は、ともすれば釘付けにされそうな視線を無理やりにはずす。
「俺は一度も『サッカーの試合』だとはいってないでしょ」
そう、言っていない。
言わないように、勘違いするように仕向けたのは、自分だから。
「そうだけどさ、でも……」
向かっている先は国立競技場……ではなく東京ドーム。
「普通さ、サッカーやってる最中に『今度の水曜のチケット手に入れたんだけど、いかない?』なんて誘われたら、サッカーの試合だって思うの普通じゃないか」
普通はそうだろうね。
俺は心の中でほくそ笑む。
「おあいにく様、俺は普通じゃないんだよ」
俺の言葉に口では俺に勝てないと思ったのか、再び唇を尖らせて窓の外を見やる。
不機嫌というよりは、ふて腐れたような表情。
「……英士の意地悪」
視線をはずしたまま、ぽそりと呟いた言葉。
どうしようもない甘い疼き。
えも知れない快感が背筋を伝う。
「……なんとでも。別に無理して行かなくてもいいけど?」
堪えきれなくなる頬の緩みを必死に隠して、ポーカーフェイスを装う。
「せっかく手に入れた巨人×中日戦なんだけどね」
「え?!」
がこちらを振り返る。
「なに?帰るの?」
帰るはずなんて無い。
が中日ファンなのは知っているから。
そんなことは百も承知。
「……わざと?」
「なにが?」
の悔しそうな表情。
俺の背を、痺れたような電流が駆け抜ける。
「……英士やっぱり意地悪だよ」
俺はゆっくりと『余裕の笑み』を浮かべる。
きっとにはそう見えているはず。
「今更何を言ってるの」
少し目を細める。
「……仕方ないから一緒に行ってあげる」
暫くの後、の妥協案。
クーラーの風で、の髪がふわりと舞った。
「そ?それは嬉しいね」
これは俺の本心。
「もー、また子ども扱いする!」
「実際子供でしょ」

はじめから――
この勝負の結果なんて見えていた。

「勝てないなぁ……英士には」
が苦笑を浮かべてそう言った。
でも、それは真実じゃない。
キミに勝てないのは、俺。
は、たった一言で俺を支配することができる。
こんなにも、自分を苦しめ、喜ばせ、幸せにすることができる。
たった一つの動作で俺を動揺させることができる。
初めから、俺の負けは見えていたのだから。
「……当たり前でしょ。俺を誰だと思ってるの」
そう、言ってみる。
いつも負けじゃ悔しいから、これはほんの少しの仕返し。
こうすれば、は俺のこと考えるでしょ。
「忘れてた、英士サマでした」
は綺麗な笑顔を俺に向ける。
柔らかな笑顔。
ほら、キミはこんなに俺の心を捉えて放さない。

車内のアナウンスが降車駅名を告げる。
「さ……行こうか」
「うん!」
俺は何事も無いようにの手を引く。
俺の鼓動は夏の太陽よりも激しく踊っていた。

* * * * *

歩:ほほう……。
涼:これはリクエストを頂いた中の一つで『英士とラブラブ!』というのを書いてみました……。
歩:リクエストに答えているって言えるの?これ。
涼:どうでしょうねぇ(遠い目)。
歩:……オイ。
涼:でもですね、今まで書いた英士は結構余裕顔でしたが、実は彼の心の中はこうなんですね(笑)。
歩:英士ファンはどう思ってるだろうね。
涼:どうだろうね(笑)。
涼:ちなみにさんが中日ファンなのは、涼澤の趣味です(ドラファン)……。他球団ファンの方、すみません(爆)。他球団ファンの方は中日をヤクルトでも阪神とでも換えて読んでください(笑)。
歩:巨人ファンの人は?
涼:……中日と巨人をひっくり反して呼んでください(爆)。
歩:パ・リーグファンの人は?
涼:……日本シリーズなんだと思えば……(泣)。すみません、もう許してやって……(泣)。
郭:……アホは放って置いて、また遊びに来てくれると嬉しいな(ニッコリ)。

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