Jesus

監督の申し出に、僕は不謹慎ながら感謝の念を覚えてしまった。
君と、僅かな間でも一緒にいられる。
ただそれが嬉しくて僕はその申し出を受けた。
一緒にバスに乗り、少し離れた野球部御用達の旅行代理店に赴く。
たまに笑って、たまに野球について真剣に話す。
いつもとなんら変わらない、それでも幸せで甘い時間。
まさか、それが最後になるとは思いもせずに。

君は桜の下に立ち尽くして、走り寄る人影に見入っていたね。
瞬間的に気がついたよ。
あれが例の「アイツ」なんだと。
桜が君を取り巻いて、まるで女神のように美しい。
でも、君はもう僕を見ていない。
君の心は僕には無いんだね。

And then I saw Him in the crowd
A lot of people had gathered round Him
The beggars shouted the lepers called Him
The old man said nothing
He just stared about him
All going down to see the Lord Jesus
All going down to see the Lord Jesus
All going down

抱き合う二人。
悪夢は現実になった。
僕は二人に背を向ける。
いずれはこうなることを予測していた。
僕の手に残ったのは伝票の控えと空虚だけ。
ああ、僕の心はどうしてこんなに苦しいのか?

Then came a man before His feet he fell
Unclean said the leper and rang his bell
Felt the palm of a hand touch his head
Go now go now you're a new man instead
All going down to see the Lord Jesus
All going down to see the Lord Jesus
All going down

神様、どうして僕をこの場に遣わしたのですか?
神様、どうして彼に恋人を遣わしたのですか?
神様、どうして僕の心が悲鳴を上げているのですか?
ああ、神様……!

一人で歩く桜並木。
行きは一人ではなかった。
誰もいない右側が寂しい。

それでも……
彼が幸せなら、僕は彼を見守ろう。
もう君に触れることは無いけれど、それでも君を見守るよ。


神様、僕にほんの少しだけ力を貸してください。
明日からも、笑顔でいられる力を。
彼の前で笑っていられるように。

♪ " Jesus "  Words and music by Freddie Mercury

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